前田 和久

Kazuhisa Maeda

  • 医療法人ロングウッド 理事長
  • 前田クリニック 院長

資 格

  • 日本内科学会認定 総合内科専門医
  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
  • 日本循環器学会認定 循環器専門医
  • 日本肥満学会認定 肥満症専門医
  • 日本医師会認定 産業医
  • 日本医師会認定 健康スポーツ医

経 歴

平成元年 大阪大学医学部 卒業、同・第二内科 入局
平成2年 社会保険 紀南綜合病院 内科
平成5年 大阪大学 細胞工学センター
平成9年 市立豊中病院 循環器科 医員
平成11年 ハーバード大学パブリックヘルス校栄養部門 研究員・助手
平成14年 阪大病院 未来医療センター
平成16年 大阪大学医学部附属病院 循環器内科学助手 日本肥満学会 学術奨励賞(旧・肥満学会賞)受賞
平成18年 大阪大学医学部 内分泌代謝内科学 講師
平成21年 大阪大学大学院医学系研究科 統合医療学寄附講座 准教授
平成27年 前田クリニック 院長 大阪大学 内分泌代謝内科 特任講師
平成29年 医療法人ロングウッド 理事長

INTERVIEW

北千里で開業された理由を教えてください。

私自身は、北摂豊中市で産まれ、大阪南部の高石市で育ちました。母校の阪大医学部も私が入学したときは大阪市内の中之島にありましたが、1993年に吹田市に移転し、私も阪大病院などのあるエリアが医師としての活動の中心でしたので、なじみもあったのか、自然にこの辺りでの開業を意識しました。

そんな折に、大学の大先輩で、この場所で40年以上にわたって「梶田内科」を運営してきた梶田知道先生が閉院されるという話を伺ったので、場所を引き継ぎ、新規開業というかたちで、前田クリニックを設立しました。

また、市内近隣には大阪大学医学部附属病院、国立循環器病研究センター等があります。専門的な医療機関があるエリアの立地を生かし、連携することで、患者さんに安心してもらえる医療が提供しやすいというメリットも感じています。

これまでの経歴や、研究のテーマを教えてください。

大学卒業後、紀南綜合病院の救急に勤務したあと、1993年から阪大の細胞工学センターで研究に携わったことがきっかけで、肥満に関係する脂肪組織の研究を始めました。私の所属するグループは糖尿病や動脈硬化、がんの予防に働くことがわかっている善玉ホルモン「アディポネクチン」を発見したのですが、このホルモンの解析結果を評価できる研究者が日本にはおらず、私が米国・ハーバード大学へ評価を依頼することになりました。1997年から赴任した市立豊中病院循環器科にいたときに米国留学のお誘いがあり、1999年に渡米し、ハーバードのパブリックヘルス校栄養部門の研究員・助手となり、メタボリックシンドロームの研究を行いました。

帰国後、阪大病院の未来医療センターに入り、アディポネクチンの解析と、吸引した脂肪を利用した再生医療の研究を行いました。その後は、大阪大学にて、統合医療学寄附講座での研究や、ウエイトマネジメント外来、糖尿病診療等を担当し、2015年に前田クリニックを開院しました。

「ロングウッド」の名前の由来を教えてください

「医療法人ロングウッド」の名前は、アメリカ・ボストンにある「ロングウッド・メディカルエリア」に由来しています。この地域は、私が留学していたハーバード大学医学部をはじめとする世界的な医療機関や研究機関が集まり、医学と医療の最前線で革新的な研究が行われている場所です。特に栄養分野では、慢性疾患や生活習慣病の予防、免疫系への栄養の影響、腸内フローラとの関係など、幅広い研究が進められています。

このような先進的な医療研究が行われている地域名を冠する医療法人ロングウッドは、質の高い医療サービスと、栄養学や予防医学における最前線の知見を取り入れた医療提供を、大きな目標に掲げています。
そして、ロングウッド・メディカルエリアのように、医療機関としての信頼性と先進性を大切に、地域社会に貢献する医療法人であり続けたいという願いを込めています。

普段の診療で心掛けていることを教えてください。

月2回は日曜午前も診察するなど、患者さんの利便性を重視していますが、さらに心がけているのは患者さんの状態を全人的に診察して治療方針を判断することです。2009年から開業まで准教授として在籍した阪大の統合医療学寄附講座は内科と外科の教室が一緒になっていて、薬や手術ではうまくいかない場合、広い視野で治療を探っていました。例えば、大きな事故によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)などになっているケースです。脳外科に行っても整形外科に行っても痛みが取れない。そういう場合は鍼や、ヨガによるリラックスなどの選択肢もあります。今も患者さんにしっかりと向き合って、高い視点から改善方法も探るようにしています。

全人的な治療とは、数字にとらわれすぎない、と言い換えてもいいかもしれません。例えば糖尿病の場合、私は単に血糖値を薬だけでコントロールしようとする治療には疑問を持っています。ですから、あまり薬を使わず、できる限り食事の指導による改善をめざすのがモットー。患者さんの状態によっては内服薬のみのコントロールもするなど、幅広い対応をしていますが、血糖値が高いこと、そのものが悪いことではないと思っているのです。高血糖が動脈硬化につながるメカニズムなどが問題なので、肥満など血糖値の高さに付随するほかの危険因子を改善することが有効だと考えています。食事の指導によって体重を減らすことのほか、しっかりと体を動かすとか、ストレスをためないようにするなど生活習慣改善は、単に薬で血糖値を下げるより大切だと思っています。食事指導を重視するのは、体はすべて、食べたものが置き換わってできているからです。

今後の展望について教えてください。

当院のある地域は医療環境が優れていますし、地元の方々の健康への意識も高いので、もっと、このようなエリアを広げていくことに貢献したいと思っています。社会的なシステムの問題にも関わってくるので、行政との連携も必要です。そこで私にできることは何か、と考えています。

前田クリニック開院後、高石市、京都市にそれぞれ、クリニックを開院しました。たいへん志が高く、優秀で人望も厚い先生方とご縁をいただき、とてもありがたく思っています。

全人的な医療や先進医療をもっと広域に拡大することは健康寿命が延びることにつながりますので、今後さらに高齢化が進む社会では切実に重要なことだと考えています。